雨と桜と進級式

長かったようで、でもあっという間だった、息子の春休みが終わりました。

当面、幼稚園に週4日、発達支援教室に1日通います。

その幼稚園の進級式が土曜日にあり、これが新年度の始まりになりました。

 

進級式当日は小雨が降る、肌寒い朝でした。

幼稚園では、年中から制服を着ることになります。

とは言っても、行き帰りだけなんで、幼稚園に着いたらすぐに着替えることになるのですが。

何度か試しに着てみたことはあったものの、ちゃんと着替えて、しかも外出するのは初めて。

新しいパリッとした制服でテンションあがるよね、というのは息子には全くなく、いつも通り、着替えには大変手間取りました。

幸い、両親が一緒だからなのか、幼稚園に行くこと自体には全く抵抗しなかったのですが。

 

幼稚園に着くと、クラス替えがあったので、新しいクラスを教えてもらい、教室に向かいます。

教室に着くと、自分のロッカーの場所を覚えます。

ロッカーは名前順に並んでいるのですが、息子は、そのルールから外れ、一番端っこのロッカーが割り当てられていました。

 

そのことよりも、ロッカーの脇に、今日の行事の流れを書いたカードが飾られていました。

教室で用事を済ませる→先生の話を聞く→進級式にでる→教室に戻ってくる→解散

それぞれのカードは、イラストが添えられています(文字はまだ読めないですし)。

 

この方法、息子には(息子に限らないのですが)とても落ち着かせる効果があるようで、発達支援教室でやっていた手法です。

幼稚園の先生が発達支援教室の見学に来てくれた際にやり方を学び、用意してくれていたとのこと。

 

私、自分でも息子でも、特別扱いされるのが、おこがましくも恥ずかしく思う方で嫌なのですが(貧乏人の性分ですね)、ロッカーの位置もカードも、幼稚園が息子を受け入れよう、通わせようとしてくれる気持ちが見えて、とても有難いと思いました。

息子はいい人に囲まれていて、幸せだなとうれしくなりました。

 

親は一足先に進級式の会場(大きなホール)に移動し、準備が整うと先生に率いられて園児たちが入場してきます。

息子は最初に入ってきたクラスの一番最後に、担任ではない先生に手を引かれて歩いてきました。

この担任ではない先生が以前、発達支援教室の見学に来てくれた、幼稚園全体の遊軍のような位置づけの先生です。が、息子専任のようになってしまっています。

息子は、親指と人差し指で○を作り、それを目に当てて顔を隠して入場してきました。

ホールには人がたくさんいて恥ずかしかったのでしょう。

 

式はみんなで歌いましょうから始まり、幼稚園の先生方、職員さんの紹介があり、最後にお偉いさんの挨拶がありました。

初め、専任の先生の陰に隠れて私の座っている位置からは全く息子が見えなかったのですが、途中で他に泣き出した子供がいて、専任の先生がそちらにかかりっきりだったので、息子の様子をよく見ることができした。

私、会場の正面後方に座っていたのですが、息子は左手にいました。ところが、左隣に座っているお父さんは息子が右側にいたらしく、微妙に視線が交錯するようなしないような。席を代わればよかったんですけどね、言い出せないところが日本人だなーと思いました。

 

式の最中、泣き出すことはなく、それどころか、じっと正面を向いたまま、息子は座っていました。

昨年の秋、運動会では、崩れ落ちるように椅子から落ちていたことを考えると、格段の進歩と言え、感心しました。

 

ただ一方で、息子はじっと正面を向いたままなんです、真剣な顔をしながら。

先生が話していても先生を見ているわけではありません。

先生・職員のみなさんの紹介は寸劇のような形で行われるのですが、ニコリともしませんし、誰かの様子を目で追っていることもありません。

みんなで歌いましょう、にも全く反応している様子はなく、口も動いていません。

 

見ようによっては、退屈な時間に耐えているだけ、とも見えるのです。

息子の心のうちは分かりません。

分からないのですが、他人と違うと言うことは、親からは、他人からはこのように見えるんだ、ということに涙が出そうになりました。

 

式が終わり、教室に戻り、担任の先生を中心に歌を歌いました。

そこでも息子は座っているだけ。表情が変わることもありません。

歌が終わると、先生から、保護者に向けて説明があるので、みんなちょっと静かに待っていてね、とお願いがありました。

その時です、今日はじめて、息子が動いたのは。

待っている間、何をしたらいいの?、と聞いたんです。

 

先生と同じく、私もびっくりしていて、先生が受け流したことは覚えているのですが、何を言ったのかは思い出せません。

ただ、息子が言われたことにうなずいたことは覚えています。

 

保護者向けの説明が終わると、雨は止んでおり、園庭も思ったほど濡れていないので、写真を撮るなりして帰ってくださいね、と言われました。

お友達同士、写真に納まる子供たちに混ざることなく、遊んでいく?という問いかけに答えることもなく、早く帰ろう、と急かされました。

お願いして何枚か桜と一緒の写真を撮って、誰よりも早く、幼稚園から出ていきました。

 

息子は将来、この日のことを思い出すだろうか。思い出すとしたら、それは楽しい記憶なのだろうか、辛い記憶なのだろうか。

そう思いながらも、どっちの記憶であれ、思い出してほしい、そ時に写真が手掛かりになるといいな、と思いました。